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2026.02.06

AIに検索を奪われる時代の士業SEO|影響・対策・今後の戦略まとめ

森井 良至
執筆者
合同会社オルトベース 代表 森井 良至

「検索1位を維持しているのに、問い合わせが半減した」。2024年後半から、士業の先生方からこのような相談が急増しています。原因はGoogleのAI Overview。検索結果の最上部をAIが占拠し、ユーザーがサイトをクリックしなくなっているのです。この記事では、最新の調査データをもとに、士業が今すぐ取るべきSEO戦略の転換点を具体的な数字と実例を交えて解説します。

検索1位でも問い合わせが減る時代が来た

SEOの常識が根本から覆りつつあります。これまでは「検索1位=集客成功」でしたが、AI Overviewの登場により、1位を取っても流入が激減するという現象が起きています。この変化は一時的なものではなく、検索エンジンの構造的な転換点と捉えるべきです。

AI Overviewが検索結果の最上部を占拠している

AI Overviewとは、Googleが検索結果の最上部に表示するAI生成の回答ボックスです。ユーザーの検索意図に対し、AIが複数のWebサイトから情報を収集・要約して直接回答を表示します。従来のように「検索→クリック→サイト閲覧→情報取得」という流れではなく、「検索→AI回答を読む→満足して離脱」という行動パターンが主流になりつつあります。

Search Engine Landの報道によると、AI Overviewは米国の検索結果の60%以上で表示されるようになっています(出典:Search Engine Land)。日本でも2024年8月に正式導入され、士業関連キーワードでの表示が急速に拡大しています。Googleはこの機能の利用満足度が高いと公表しており、今後縮小される可能性は低いと考えられます。

クリック率は従来の3分の1まで低下する

Ahrefsの調査では、AI Overviewが表示されるキーワードにおいて、検索1位のクリック率(CTR)が58%低下することが判明しました(出典:Ahrefs Blog)。これは30万キーワードを分析した大規模調査の結果です。

検索順位 従来のCTR AI Overview表示時 変化率
1位 7.3% 2.6% -64%
2〜4位合計 約15% 約8% -47%
5〜10位合計 約8% 約3% -63%

Seer Interactiveの大規模調査(2024年6月〜2025年9月、42組織・2,500万インプレッション分析)では、さらに深刻な結果が出ています。AI Overviewが表示されるクエリのオーガニックCTRは、1.76%から0.61%へと65%低下しました(出典:Seer Interactive)。

この数字を具体的に考えてみましょう。月間検索ボリューム1,000のキーワードで1位を取った場合、従来なら月間70〜80件の流入が見込めました。しかしAI Overview表示後は25〜30件程度まで減少します。年間で換算すると、500件以上の見込み客を失っている計算になります。これは小さな数字ではありません。

士業キーワードの40%はすでにAIに食われている

すべてのキーワードが等しく影響を受けるわけではありません。AI Overviewには「表示されやすいキーワード」と「表示されにくいキーワード」があり、士業サイトでよく狙われる情報提供型キーワードは前者に該当します。まずは自社サイトがどの程度影響を受けているかを把握することが重要です。

自社サイトの影響度を確認する方法は簡単です。Googleのシークレットモードで、自社が上位表示されているキーワードを検索してください。検索結果の最上部にAI Overviewが表示されていれば、そのキーワードからの流入は大幅に減少している可能性があります。主要キーワード20〜30個をチェックし、何割がAI Overviewに食われているかを把握することから始めましょう。

「〇〇とは」「〇〇 方法」は狙っても無駄になる

弊社の調査では、士業関連キーワードの約40%でAI Overviewが表示されています。特に以下のパターンは表示率が70%を超えており、今後のSEO対策では優先度を下げるべきです。

  • 定義系「相続税とは」「顧問弁護士とは」「成年後見制度とは」
  • 手続き解説系「会社設立 手続き」「相続登記 必要書類」「確定申告 期限」
  • 比較系「税理士 公認会計士 違い」「弁護士 司法書士 違い」
  • 一般的なHow to系「確定申告 やり方」「遺言書 書き方」「契約書 作成方法」
  • 費用相場系「弁護士 費用 相場」「税理士 顧問料 相場」

これらのキーワードで1位を取っても、ユーザーはAI Overviewの回答を読んで満足し、サイトをクリックしません。特に「〇〇とは」系のキーワードは、AIが最も得意とする「定義の説明」であり、人間のサイトが介在する余地がほぼありません。

定義・手続き系の記事は資産価値が急落している

多くの士業サイトが「〇〇とは」から始まる解説記事を量産してきました。これは従来のSEOでは正しい戦略でした。検索ボリュームが大きく、上位表示できれば安定した流入が見込めたからです。しかし、これらの記事は今や「検索順位は高いが流入がない」という状態に陥っています。

弊社クライアントの税理士事務所の事例を紹介します。「相続税 計算方法」というキーワードで3年以上上位表示を維持していた記事があります。このキーワードは月間検索ボリュームが2,400あり、事務所の主力コンテンツでした。しかし2024年10月以降、AI Overviewの表示開始により、月間流入が70%減少しました。別の弁護士事務所では、「離婚 手続き 流れ」で上位を獲得していましたが、同様にAI Overview導入後は流入が55%減少しました。記事の品質や検索順位は一切変わっていません。AI Overviewが表示されるようになっただけで、これだけの影響が出ています。

過去に制作した解説記事の価値が急落しています。ただし、これらの記事を削除する必要はありません。記事自体はドメイン全体の専門性評価に依然として寄与します。また、AI Overviewに引用されるソースとなることで間接的なブランド認知にも貢献します。削除ではなく、放置しつつ新規コンテンツの方向性を転換するのが最適解です。

まだ戦えるキーワードは「相談意図」と「地域名」

AI Overviewが表示されにくい、または表示されても流入が見込めるキーワードは確実に存在します。士業が今後注力すべきは「地域キーワード」と「相談意図キーワード」の2つです。これらのキーワードに戦略を集中させることで、AI Overview時代でも安定した集客が可能です。

地域キーワードはローカルパックが優先される

「新宿区 税理士」「横浜 弁護士 相続」のような地域名を含むキーワードでは、AI OverviewよりもGoogleマップのローカルパック(地図と事務所一覧)が優先表示されます。これは、地域検索においてはユーザーが「近くの専門家を探している」という明確な行動意図を持っており、AIの一般的な回答では満足できないためです。

実際に「新宿区 税理士」と検索してみてください。AI Overviewではなく、まずGoogleマップと事務所一覧が表示されるはずです。ユーザーは「新宿区で営業している税理士を探したい」という具体的な目的を持っており、「税理士とは何か」という一般的な情報を求めているわけではありません。この検索意図の違いが、AI Overview表示の有無を決定しています。

地域キーワードのメリットは他にもあります。検索ボリュームは全国キーワードより小さいですが、コンバージョン率が圧倒的に高いのです。「税理士」で検索するユーザーと「世田谷区 税理士」で検索するユーザーでは、後者の方が具体的な依頼意図を持っている確率が高いことは明らかです。

弊社クライアントの司法書士事務所では、注力キーワードを「相続登記 必要書類」(月間検索3,600)から「世田谷区 相続登記」(月間検索210)へ変更しました。検索ボリュームは17分の1ですが、問い合わせ数は月2件から月5件へと2.5倍に増加しています。流入数ではなく、実際の問い合わせ数で評価すべきという好例です。

「弁護士に相談すべきか」系は人間のサイトに流入する

AIは一般的な情報を要約することは得意ですが、「自分の状況で専門家に相談すべきかどうか」という判断を下すことはできません。このような相談意図を含むキーワードは、依然として人間のサイトへの流入が発生します。ユーザーは「判断」や「背中を押してもらうこと」を求めており、それはAIには提供できない価値だからです。

相談意図キーワードの具体例

情報収集キーワード(避ける) 相談意図キーワード(狙う)
遺言書 書き方 遺言書作成 弁護士に頼むべきか
確定申告 やり方 確定申告 税理士 丸投げ 費用
会社設立 手続き 会社設立 司法書士 必要か
離婚 流れ 離婚 弁護士 入れるタイミング
相続税 計算 相続 税理士 いつ相談
就業規則 作り方 就業規則 社労士 依頼 メリット

情報収集キーワードとの決定的な違い

情報収集キーワードは「知識を得たい」という意図であり、AIの要約で十分に満足できます。一方、相談意図キーワードは「判断を助けてほしい」「自分のケースに当てはめてほしい」「背中を押してほしい」という意図を含んでいます。最終的に専門家との接触を前提としている点が決定的に異なります。

相談意図キーワードで検索するユーザーは、すでに「専門家に依頼する可能性」を意識しています。そのため、記事を読んだ後の問い合わせ率も高くなります。弊社の実績では、情報収集キーワード経由の問い合わせ率が0.3%程度なのに対し、相談意図キーワード経由では1.2%と4倍の差があります。

既存記事の7割はリライトより放置が正解

「AI Overviewに対応するために既存記事をリライトすべきか」という質問をよく受けます。結論として、ほとんどの記事はリライトしても費用対効果が合いません。限られたリソースは、より効果的な施策に振り向けるべきです。

AI Overview対象記事のリライトは費用対効果が悪い

AI Overviewが表示されるキーワードで上位表示されている記事は、どれだけリライトしてもクリック率の低下を防げません。AIの要約精度が上がるほど、ユーザーはますますクリックしなくなります。これは記事の品質の問題ではなく、検索結果の構造的な変化によるものです。

リライト1記事あたりの費用を3〜5万円と仮定します。20記事をリライトすれば60〜100万円のコストがかかりますが、AI Overviewが表示される限り、流入増加は期待できません。この費用を相談意図キーワードの新規コンテンツ制作に振り向ければ、10〜15本の新規記事を作成でき、実際の問い合わせ増加に直結します。

事例・実績ページへのリソース集中が最適解

AIが要約できない情報、つまり「あなたの事務所固有の情報」は依然として大きな価値を持っています。これらのコンテンツは、AI Overviewに要約されることがなく、かつ「この事務所に相談したい」という意思決定を直接後押しします。

  • 解決事例の詳細(守秘義務の範囲内で、課題・解決策・結果を具体的に)
  • お客様の声・インタビュー(実名・顔出しがベスト、難しければイニシャルでも可)
  • 代表者のコラム・専門家としての見解(法改正への意見、業界動向の分析など)
  • 事務所独自の料金体系と、その価格設定の理由
  • 他事務所との違い、選ばれる理由の明確化

これらのコンテンツは検索流入を直接増やすものではありませんが、サイトに訪問したユーザーの問い合わせ率を高めます。AI Overview時代は「流入数×問い合わせ率」の後者を高める施策が重要になります。

弊社クライアントの行政書士事務所では、解決事例ページを10件から30件に拡充した結果、サイト全体の問い合わせ率が1.8%から3.2%へ向上しました。流入数は変わっていませんが、問い合わせ数は約1.8倍に増加しています。これがAI Overview時代の正しいリソース配分です。

今すぐ実行すべき3つの戦略転換

AI Overview時代を生き残るために、士業事務所が今すぐ実行すべき戦略転換は以下の3つです。いずれも特別な予算は不要です。いずれも明日から着手可能な施策であり、中長期的な集客基盤の構築に直結します。

情報提供型から相談誘導型へコンテンツを転換する

「〇〇とは」「〇〇の方法」という情報提供型コンテンツから、「〇〇で悩んだらまず相談」「〇〇を弁護士に依頼するメリット」という相談誘導型コンテンツへシフトします。記事のゴールを「情報を伝える」から「相談の必要性を認識させる」に変更するのです。

記事の構成も変更が必要です。従来は「解説→まとめ→問い合わせ誘導」という流れでしたが、冒頭から「このような状況なら専門家に相談すべき」というメッセージを入れる構成が効果的です。AI Overviewで情報だけ取得したユーザーが、後から相談を検討した際に想起される存在になることを目指します。

具体的には、記事の冒頭に「このようなケースは専門家に相談すべきです」というボックスを設置し、該当する状況を箇条書きで示します。読者は自分が該当するかどうかをすぐに判断でき、該当する場合は記事を読み進めるモチベーションが高まります。

Googleビジネスプロフィールの優先度を上げる

地域キーワードではローカルパックが優先表示されるため、Googleビジネスプロフィール(GBP)の最適化がこれまで以上に重要になります。GBPは無料で利用でき、適切に運用すれば安定した集客チャネルになります。

  • 口コミ件数と評価の向上(依頼完了時に口コミ依頼を習慣化。目標は30件以上)
  • 投稿機能の定期活用(週1回以上の更新。事例紹介、お知らせ、コラムなど)
  • 写真の充実(事務所内観、スタッフ写真、相談風景。最低20枚以上)
  • Q&A機能への回答(よくある質問を自ら投稿し、自ら回答する)
  • 営業時間、サービス内容、支払い方法などの情報を常に最新に保つ

GBPからの流入は、AI Overviewの影響を一切受けません。SEO予算の20〜30%をGBP対策に振り分けることを推奨します。特に口コミ数は、ローカルパックでの表示順位に直結する重要な指標です。依頼完了後に口コミを依頼する仕組みを作り、意識的に増やす施策を講じてください。

指名検索を増やすブランディングに投資する

「〇〇法律事務所」という事務所名での検索(指名検索)は、AI Overviewの影響を受けにくく、かつコンバージョン率が最も高い検索です。指名検索が多い事務所は、検索アルゴリズムの変動に左右されにくい、安定した集客基盤を持っていると言えます。

指名検索を増やすための施策は以下の通りです。

  • YouTubeチャンネルでの情報発信(週1本の動画投稿を1年継続が目安)
  • セミナー・ウェビナーの定期開催(月1回、無料の入門セミナーから開始)
  • 書籍・電子書籍の出版(専門分野での権威性を確立)
  • メディア取材への積極的な対応(プレスリリース配信サービスの活用)
  • SNSでの専門家としての発信(X、LinkedIn、Facebookから1つ選んで注力)

これらの施策は即効性はありませんが、検索エンジンに依存しない集客チャネルを構築するという点で、中長期的なリスクヘッジになります。AI Overview時代は、Googleからの流入だけに頼るビジネスモデルのリスクが顕在化した時代とも言えます。今から複数チャネルを構築しておくことが、5年後の事務所経営を左右します。

最後に

AI Overviewの登場により、「1位を取れば集客できる」という時代は終わりました。しかし、これは士業のSEOが無意味になったということではありません。狙うキーワードを「情報提供型」から「相談意図型」「地域型」へ転換すれば、むしろ競合との差別化がしやすくなります。従来のSEOに固執している競合事務所が多い今だからこそ、戦略転換を実行した事務所は先行者利益を得ることができます。

重要なのは、AIが回答できる一般的な情報ではなく、専門家にしか提供できない価値を発信すること。そして、検索エンジンだけに依存しない複数の集客チャネルを構築することです。変化を恐れず、この2つを着実に実行できた事務所が、AI Overview時代の勝者となります。

弊社では、AI Overview時代に対応したSEO戦略の立案から、既存コンテンツの優先度診断、Googleビジネスプロフィールの最適化まで、士業事務所のWeb集客を総合的にサポートしています。「自社サイトがどの程度AI Overviewの影響を受けているか」「どのキーワードに注力すべきか」といった診断は無料で承っております。現状把握から始めたいという先生は、まずはお気軽にご相談ください。

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