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2025.12.18

士業の先生へ伝えたい、ホームページ公開後の実態

森井 良至
執筆者
合同会社オルトベース 代表 森井 良至

士業のホームページは「公開しただけ」では問い合わせは増えない

士業業界だと「○○市 税理士」「○○区 弁護士」など、エリア名で検索されるケースがほとんどですが、公開直後から上位に表示されるわけではありません。実際、地域によっては税理士事務所だけで50件以上あることも珍しくなく、公開しただけで自然と問い合わせが増える、という状況はまずありません。

検索順位は、タイトルタグが正しく設定できているか、コンテンツ量は一定あるか、という一般的な部分だけでなく、ドメインがどれくらい運営されているか、他社からのリンクをどれくらい受けているか(被リンク数)など、色んな要因が影響し、公開直後は不利な状態からスタートします。

事務所をすでに認識している取引先や紹介先、交流会などで名刺交換した相手がホームページを見て問い合わせる、という流れは一定数あるので、ホームページ自体は用意しておいた方がベターですが、過度な期待をすると肩透かしをくらいます。

お問い合わせフォームを設置すると営業メールは避けられない

お問い合わせフォームを設置すると、かなりの頻度で営業メールが届くようになります。最近はAIがフォームを自動送信するツールが大量に出回っていて、どの先生のところにも届く、ほぼ避けられない現象です。

さらに、メールアドレスをホームページに載せると、リスト収集会社に拾われて他社に販売され、そこからまた営業メールが届く、という流れも普通にあります。本来は電子メール広告規制でアウトなのですが、関係なく送ってくる会社が多いのが実情です。

ちなみに弊社(制作会社)も、毎日3〜4件程度、どうでもいい営業問い合わせが届きます。なので「営業が多くて…」と言われる士業の先生の気持ちは、本当によく分かります。

「提携しませんか?」「取材したいです」はほぼ営業

「提携したいです」「取材したいです」といった問い合わせのほとんどは営業です。私の実感値だと、提携系は9割が営業、取材系は9割が広告費が発生します。

もちろん中には本物もありますが、期待値を上げすぎない方が精神的に楽です。

「相互リンクしませんか?」の正しい考え方

相互リンクの依頼は、前提として相手側に順位上昇のメリットがあるものですが、親和性が高ければ自分の事務所にもメリットが出るケースがあります。ただし、Googleは順位上昇を目的とした相互リンクを禁止しています。

とはいえ正直な話、被リンクの多さ(正確には、ドメインパワーが強いサイトからの自然なdofollowリンク)は、昔から今に至るまで検索順位に影響する要素です。

弊社でも「こんな相互リンクのメールが来たんだけど」と相談されることがありますが、nofollowが入らない形(dofollow)で、かつ親和性が高いサイト・ページから無料でもらえるなら、やった方が良い、と回答しています。

SEO・MEO業者の営業は特に要注意

私自身、SEOサービスを提供している立場ですが、士業向けのSEO・MEO営業は本当にしつこいです。「すぐ上位にできます」「成果報酬なのでノーリスクです」など、聞き心地の良い言葉を並べてくる会社ほど危険なことが多いです。

実体のないサテライトサイトからの被リンクや、架空の口コミ増加など、一時的に順位が上がることはありますが、バレた瞬間にサイト全体の評価が落ちます。ホームページは長期で育てるものなので、短期的な“ハック系SEO”には本当に注意が必要です。

ドメイン・サーバー管理は思っているほど手間ではない

ドメインとサーバーは、導入前に不安を感じる先生が多いですが、クレジットカードで自動支払いを設定してしまえば、ほとんどやることはありません。実務として発生するのは、社員が増えた際のメールアドレス発行くらいです。

この管理だけで制作会社に毎月1万円以上支払っている場合、結構な無駄コストになっている可能性があります。自分で契約すれば、安ければ月1,000円程度、高くても月5,000円程度が士業サイトの相場感です。

もちろん、制作会社に依頼する運用保守には、ページ修正や追加、WordPressのアップデート対応なども含まれるケースがあります。ただし、ドメインとサーバー管理しかしてもらっていないなら、月1万円以上は高いと言えます。

プレスリリース掲載の正体は「自動転載」がほとんど

無料のプレスリリースサービスを使うと、五代新聞系列などを含め、さまざまなメディアに一斉掲載されますが、ほぼすべて自動転載です。

「日経新聞に掲載されました!」と謳われることもありますが、取材されたわけでも、記事として扱われたわけでもありません。使うこと自体は悪くありませんが、過度な期待は禁物です。

紹介会社・マッチングサイトは費用がかなり高い

士業向けの紹介会社やマッチングサイトは年々増えていますが、成果報酬はかなり高額です。

紹介会社なら年間顧問料の60〜70%、マッチングサイトなら15〜20%の成果報酬、または毎月数万円の掲載費、というのが相場感です。

短期的に新規獲得したいときには便利ですが、依存すると利益率がどんどん下がります。最終的には「自社サイトから問い合わせが来る」または「紹介で安定的に問い合わせが来る」状態を作るのが一番健全です。

サイトを放置すると評価は少しずつ下がっていく

士業は制度改正・法改正が多く、半年〜1年放置するだけで情報が古くなりがちです。Googleも更新のないサイトを徐々に評価しづらくなる傾向があります。

お知らせの更新やコラム記事など、先生にしか書けない内容が、実は一番SEOに効くことも多いです。月に1〜2回程度の更新ができるとベターです。

最後に

ホームページは、作った瞬間から自動的に仕事を運んできてくれる魔法のツールではありません。特に士業のホームページは、公開直後に劇的な変化が起きることの方が少なく、「思っていたより静かだな…」と感じる先生の方が圧倒的に多いです。

ただ、それは失敗しているわけでも、無意味なわけでもありません。実際には、名刺交換した相手があとから検索していたり、紹介を検討している人が事務所の雰囲気を確認していたりと、水面下ではきちんと役割を果たしています。

営業メールが増えたり、順位がなかなか上がらなかったり、期待とのギャップにモヤっとすることもありますが、それも「ちゃんと公開して、ちゃんと見られている」証拠でもあります。問題なのは、そこで「意味なかったな」と止めてしまうことです。

お知らせなどやコラムを最低限更新し続ける。それだけでも、時間をかけて「問い合わせにつながるサイト」に変わっていきます。

派手な施策より、地味でも正しい運用を。士業のホームページは、短距離走ではなく、確実に効いてくる長距離走だと思って向き合うのが、一番しっくりくる付き合い方です。

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