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2025.12.23

士業の紹介会社・マッチングサイトが問題ないとされる理由と集客の実体

森井 良至
執筆者
合同会社オルトベース 代表 森井 良至

士業が集客を行おうとした場合、現在ではさまざまな選択肢が存在します。

代表的なものとしては、「税理士ドットコム」「弁護士ドットコム」に代表される士業専門の紹介会社のほか、「ミツモア」「比較ビズ」「PRONIアイミツ」のようなマッチングサイト、さらには「クラウドワークス」のような総合型クラウドソーシングサービスも挙げられます。

加えて近年では、「弥生会計」「freee」「ソリマチ」といった会計ソフト提供事業者が、税理士とのマッチングや紹介サービスを展開するなど、士業領域における集客支援の形は多様化しています。

一方で、これらのサービスはすべてが同じ法的立場にあるわけではありません。士業ごとに定められている士業法や倫理規程では、不当な依頼誘致や紹介行為に関する規制が設けられており、特に「紹介料」や「成果報酬」といった対価性の強い仕組みについては、問題となるケースがあります。こうした点を踏まえ、士業別に「なぜ紹介料が問題視されるのか」、そしてその根拠となる条文について整理していきます。

士業別に見る「紹介料が問題になる理由」と根拠条文

それぞれの士業について、「紹介料がなぜ問題になり得るのか」を、根拠となる条文とあわせて整理していきます。

士業 紹介料の扱い(概要) 根拠となる法律・規程
弁護士 金銭等を対価とする紹介は不当な依頼誘致として問題となり得る 弁護士法(依頼誘致に関する趣旨規制)
弁護士職務基本規程第13条(不当な依頼誘致の禁止)
司法書士 対価を伴う紹介は原則として認められていない 司法書士倫理第13条の2(不当な依頼誘致等の禁止)
司法書士法施行規則第26条(依頼誘致の禁止)
行政書士 紹介自体は直ちに違法ではないが、報酬設計に制限がある 行政書士法第15条の3(不当な報酬の禁止)
社会保険労務士 紹介料の支払いは不適切と判断されるおそれが高い 東京都社会保険労務士会会則第43条の4(不当な勧誘行為の禁止)
税理士 特に制限なし
税理士会の会則に「非税理士(税理士法52条・53条に違反する者)からの業務斡旋を受けてはならない」という規定があるものの、52条・53条は「税理士でないのに税理士業務を行う人」「税理士でないのに税理士を名乗る人」なので、そこが守られていれば問題なし

このように、紹介料や対価を伴う依頼誘致に対する考え方は、士業ごとに若干異なります。一部の士業(特に司法書士)では厳格な禁止規定が設けられている一方で、税理士のように比較的柔軟な運用がなされている領域も存在します。

プラットフォーム側の費用請求に関する実態

弁護士・司法書士・社会保険労務士・行政書士については、金銭を伴う紹介が制限されている一方で、プラットフォーム側(紹介会社やマッチングサイト側)は直接的な「紹介料」を避けるため、以下のような名目で紹介料の請求を行います。

  • サーバー利用料
  • システム利用料
  • 広告掲載料

これらは形式上、直接的な「紹介料」を避ける構成となっていますが、実態として紹介の対価と評価される場合には、法令・倫理上の問題となる可能性がある点には注意が必要です。

ここで、紹介会社やマッチングサイトが、どのように「問題ない」と判断しているか、実際のリンクをご紹介します。

PRONIアイミツ:社会保険労務士・司法書士の規制との関係について
比較ビズ:社会保険労務士・司法書士のお客様へ 比較ビズご利用に関する見解
弁護士ドットコム:弁護士ドットコムは弁護士法第72条に違反しないのですか?

紹介会社・マッチングサービスの一般的な相場感

士業向け(主に税理士)の紹介会社では、成果報酬型の料金体系が多く、年間顧問料の約60~75%程度で、スポット業務の場合は報酬額の約20~30%程度となります。一方、マッチングサイト型のサービスでは、成果報酬だけでなく、月額利用料数万円が発生するケースが多いです。

こうした費用については、開業したばかりの時期であれば「まずは実績を積むための必要経費」と割り切れる部分もあると思います。一方で、プラットフォーム側に支払う費用を、顧問料や業務報酬に上乗せする形で依頼者側に転嫁するケースも現実的には少なくありません。そうなると、結局は依頼者にとっての負担が増えてしまう、という点は気になるところです。

また、紹介会社は成果報酬が高額になりやすいため、コスト面だけを見るとマッチングサイトの方が良さそうに感じるかもしれません。ただ、マッチングサイトはマッチングサイトで、応募が殺到して早い者勝ちになりやすかったり、相見積もりの中で価格競争が激しくなり、安請け合いになってしまう、といった側面もあります。

ヒアリング行為が禁止されるので案件の質は低め

資格を有しない者が、依頼者に対して業務内容に踏み込んだヒアリングを行うと、基本的に問題となります。具体的には、単なる事実確認や受付対応の範囲を超えて、

  • 依頼者の状況を整理・判断する行為
  • どの士業・どの手続が適切かを選別する行為
  • 業務内容や進め方について実質的な説明・助言を行う行為

などが行われた場合、無資格者による業務介入や、場合によっては非弁行為・無資格業務と評価されるリスクが生じます。このため、プラットフォーム側は「ヒアリングをしない」「適している士業の案内をしない」ことを前提に、あくまで機械的な情報の受け渡しに留める設計となっています。

結果として、案件の内容が十分に精査されないまま士業に引き渡されるケースも多く、「案件内容が薄い」「成約率が低い」と感じられる一因になっているのが実情です。

紹介会社やマッチングサイトの利用に関して

色々とネガティブキャンペーンっぽい内容となってしまいましたが、弊社では士業のホームページを制作するなかで、集客を考えている先生に「紹介会社ってどうなの?」「マッチングサイトってどうなの?」聞かれることが度々あります。

私の回答としては、紹介会社はフィーが高額過ぎるから推奨しない、マッチングサイトにおいては検討の余地あり、といった感じで回答しております。(おすすめしないマッチングサイトもあるのですが、ここでは記載を控えます。ただGoogleマイビジネスでクチコミを見てもらえれば、なんとなく判断はつくかと)

ただ、こうしたプラットフォームを利用するメリットは、単なる顧客獲得にとどまりません。自社ホームページへの被リンクを獲得できたり、「おすすめ〇選」といった記事で紹介されたり、記事監修を通じて専門性を高められるケースもあります。

Googleで上位表示を狙う場合はもちろん、GPTやAIOなどのAIに紹介されやすくするためにも、自身のホームページでの情報発信に加えて、第三者からの紹介や言及は重要な要素になります。プラットフォーム側に情報が掲載されたり、「おすすめ〇選」の記事に取り上げられたりして、ストレスを感じている士業の先生もいらっしゃるかと思いますが、評価の観点ではGoogleからプラスに働く可能性が高く、Web集客を検討しているのであれば、安易に取り下げない方がよいケースも多いと感じています。

とはいえ情報更新されず、前の住所が表示されていたり、昔やっていた割引価格が今も表示されていたりと、トラブルが発生するリスクはありますが…。

結局Webで集客するなら、何をすべきなのか

士業のSEO対策

有益な情報を発信するコラム記事の作成、いわゆるコンテンツSEOは、現在でも最も優先すべき施策だと考えています。SEO業界に10年以上携わる中で、さまざまな小手先の施策も見てきましたが、結局のところ、この方法が常に王道であり、過去も現在も通用する施策です。

ただ、半年ほど前(2025年6月頃)から、Googleが検索結果上で自動的に要約して回答するAIOが登場し、さらにYahooでも8月に同様の機能がリリースされるなど、従来のSEOは費用対効果が下がってきている側面もあります。とはいえ、現時点では有効なAIO対策が確立されているわけではありません(そもそも質問のたびに回答が変わるため、「これをやればGPTやAIOに必ず紹介される」といった方法は存在しない状態)。

それでも、AIが学習・参照するためのデータがなければ取り上げられることはないため、自社ホームページで情報発信を行う、コラム記事を書くといった施策は、少なからず今後も必要になると考えています。

なお、必ずしもコラム記事という形式にこだわる必要はありません。他社があまり用意していないニッチな業務内容のページを作成したり、具体的な事例を掲載したりする方法も有効です。

以下、税理士向けのSEOに関する記事ですが、他の士業の方にも参考になる内容かと思います。

士業のリスティング広告

リスティング広告も検討すべき施策ではありますが、現状では「業界特化(飲食店特化など)」「業務特化(税理士であれば税務調査など)」「顧問料格安(設立〇年未満は月額1.5万円など)」といった、明確に打ち出せる強みがないと、戦うのはかなり厳しい印象です。

その背景として、AIOの登場などによるアクセス減を受け、広告出稿量を増やす企業が増えていることが挙げられます。広告のクリック単価はオークション形式で決まるため、結果として1クリックあたりの単価がどんどん上昇しています。

弊社でも過去に「ホームページ制作 士業」「ホームページ制作 弁護士」などのキーワードで広告を出していた時期がありますが、1クリックあたり1,000円を超えることは珍しくなく、高いときには2,000円に達することもありました。CVR(お問い合わせ率)は、業界やCVの定義にもよりますが、良くて5%程度です。

仮に、CVRが5%、商談につながる確率が50%、契約できる確率が30%とすると、1件の契約を獲得するために約140クリックが必要になります。クリック単価が1,500円の場合、1件の契約を取るのに約21万円かかる計算です。弊社のホームページ制作は平均受注単価が45〜55万円なので、正直なところ割に合わず、現在はリスティング広告の運用は行っていません。

以下、税理士向けのリスティング広告に関する記事ですが、こちらの内容も他士業の方に参考になるかと思います。

参考の情報(弊社の事例)

弊社は「士業に特化した制作会社」として、今期で8期目を迎えました。手が空いたタイミングで今回の記事のような士業をターゲットとする情報発信を行いながら、少しずつ制作実績を積み上げてきた結果、「士業 ホームページ制作」「ホームページ制作会社 税理士」といったキーワードで上位表示されています。

また、ChatGPTやAIOにおいても、おすすめの会社として表示されることがあり、お問い合わせいただいたお客様に経路を伺うと、「GPTがおすすめしていたので」といった理由でご連絡いただくケースが、ここ最近は増えてきています。

最後に

士業における集客手法は、時代とともに大きく変化してきました。紹介会社、マッチングサイト、クラウドソーシング、会計ソフト事業者による紹介サービスなど、選択肢自体は増えていますが、その一方で、士業法や倫理規程との関係を正しく理解せずに利用すると、思わぬリスクを抱えることにもなりかねません。

特に「紹介料」や「成果報酬」といった対価性の強い仕組みについては、士業ごとに考え方や規制の厳しさが異なります。表向きは「システム利用料」や「場の提供」とされていても、実態として紹介の対価と評価される可能性がある以上、仕組みだけでなく運用面にも注意が必要です。

とはいえ、マッチングサイトやプラットフォームの活用自体を、すべて否定する必要はありません。案件獲得だけでなく、被リンクの獲得や第三者からの言及、記事監修など、Web集客やSEO、さらにはGPTやAIOといったAIに紹介されるための土台づくりとして活用できる側面もあります。

最終的に重要なのは、「自分の事務所のフェーズや方針に合った使い方ができているか」です。短期的な案件獲得に偏るのではなく、自社ホームページを軸とした情報発信や実績の積み上げを行いながら、必要に応じて外部サービスを補助的に活用する。このバランスこそが、長期的に見て安定した集客につながると考えています。

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