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2026.02.07

士業が格安ホームページを選ぶと集客できない理由と適正費用の目安

森井 良至
執筆者
合同会社オルトベース 代表 森井 良至

「ホームページ制作5万円〜」「月額3,980円で本格サイト」。こうした広告を見て、格安制作を検討している士業の先生は少なくありません。しかし、弊社に寄せられる相談の中で最も多いのが「格安で作ったが集客できず、結局作り直すことになった」というケースです。格安ホームページには、表面上の価格からは見えないデメリットが数多く存在します。契約の縛り、著作権の帰属、ドメイン所有権の問題など、解約や乗り換えの際に初めて気づくトラブルが潜んでいます。この記事では、士業の先生が格安制作で実際に遭遇するリスクと、適正な費用の目安を具体的に解説します。

格安ホームページの相場は5〜15万円だが中身はテンプレートの流用

格安ホームページ制作の相場は初期費用5〜15万円程度です。この価格帯で提供されるのは、既存のWordPressテンプレートに事務所名・住所・業務内容のテキストを流し込んだだけのサイトがほとんどです。

「安い=お得」ではなく「安い=工程が削られている」という構造を理解する必要があります。通常のホームページ制作で行われるヒアリング、ターゲット設計、導線設計、SEO設計、オリジナルデザイン制作といった工程が、格安制作ではすべて省略されています。テンプレートを選んでテキストを差し替えるだけなので安く提供できる、というだけの話です。

名刺代わりに「とりあえずホームページが存在すればいい」という目的であれば格安制作でも成立しますが、問い合わせを獲得したい、検索で見つけてもらいたいという目的であれば、この価格帯では実現できません。5万円のサイトに集客力を期待するのは、軽自動車にF1のスピードを求めるようなものです。

2〜3年の契約縛りがあり途中解約できない

格安ホームページ制作で最も注意すべきなのが契約形態です。初期費用を安く見せている業者の多くは、2〜3年の長期契約やリース契約を前提としています。

月額数千円×36ヶ月で結局50万円以上になる

「初期費用0円・月額9,800円」といったプランは珍しくありませんが、36ヶ月契約の場合、総額は352,800円になります。月額14,800円なら532,800円です。初期費用が安く見えるだけで、トータルコストは通常の制作費用と同等かそれ以上です。しかも通常の制作であれば納品時に支払いが完了するのに対し、リース型は3年間払い続けるだけです。(冷静に計算すれば誰でもわかることですが、「初期費用0円」のインパクトに引きずられて契約してしまう方が後を絶ちません)

さらに厄介なのは、このリース契約がホームページの「制作」ではなく「機器のリース」として組まれているケースがある点です。この場合、クーリングオフの対象外となり、消費者保護の観点からも解約が極めて難しくなります。

途中解約すると違約金として残額を一括請求される

契約期間中に「このサイトでは集客できない」と気づいても、途中解約には残りの月額料金の一括支払いを求められるケースが大半です。1年経過時点で解約しようとしても、残り2年分の月額料金を違約金として請求されます。結果として、使わないサイトのために毎月支払いを続けるか、違約金を支払って解約するかの二択を迫られます。どちらを選んでもお金は戻ってきません。

ロゴ・バナー・写真素材の著作権が制作会社に残る

格安制作で見落とされがちなのが、制作物の著作権の帰属です。著作権法の原則として、著作物を創作した者が著作者となり、著作権は著作者に帰属します。つまり、契約書で著作権の譲渡を明記していない限り、ロゴ・バナー・アイコン・加工写真などの著作権はすべて制作会社側に残ります

他社へ乗り換える際にロゴもバナーも全て作り直しになる

著作権が制作会社にある以上、他社に乗り換える際にそれらの制作物を持ち出すことはできません。事務所のロゴ、ヘッダーバナー、各ページのアイキャッチ画像、プロフィール写真の加工データなど、サイト全体の素材を新たに作り直す必要が出てきます。名刺や封筒、パンフレットにもサイトと同じロゴを使っている場合、それらも含めて全面的にデザインを変更する羽目になります。ロゴの作り直しだけで10〜20万円、バナーやアイキャッチの再制作で5〜10万円と、想定外の出費が積み重なります。

契約書に「著作権の帰属」条項がなければ制作会社に残る

格安制作の契約書は簡素なものが多く、著作権の譲渡条項が記載されていないケースが少なくありません。「お金を払って作ってもらったのだから当然こちらのものだろう」と考える先生は多いですが、法的にはそうなりません。著作権は契約書で明確に譲渡を定めない限り、創作者である制作会社に帰属し続けます。契約前に「制作物の著作権は発注者に帰属する」「納品後の二次利用を制限しない」という条項が含まれているか、必ず確認してください。

ドメインとサーバーの所有権が制作会社名義になっている

格安制作会社の中には、ドメイン(URL)やサーバーを自社名義で取得・管理しているケースがあります。自分の事務所名が入ったドメインであっても、Whois情報の登録名義が制作会社であれば、所有権は制作会社にあります。これは不動産に例えるなら、自分が住んでいる家の登記が他人名義になっているようなものです。

解約時にドメインを引き渡してもらえずURLが変わる

制作会社を変更しようとした際、ドメインの移管を拒否される、あるいは移管手数料として5万〜15万円を請求されるケースがあります。ドメインを引き渡してもらえなければ、新しいURLでサイトを一から構築し直すことになります。これまで蓄積された検索エンジンの評価がすべてリセットされるため、SEOの観点からは致命的な損失です。せっかく「地域名 税理士」で上位表示されていたとしても、URLが変わればその順位はゼロからやり直しです。

サーバーごと人質に取られて移管交渉が難航する

ドメインだけでなく、サーバーも制作会社の共有環境に置かれている場合、サイトデータの取得すら困難になります。「サーバーの管理画面にログインできない」「FTP情報を教えてもらえない」「バックアップデータを提供してもらえない」という状態では、現在のサイトの中身を取り出すこともできません。(正直に言えば、これは人質ビジネスです。解約されたくないから、解約しにくい構造を意図的に作っている業者も存在します)

CMSのログイン情報を渡されず自分で更新できない

WordPressなどのCMSで構築されていても、管理画面のログイン情報を渡されないケースがあります。「更新作業はすべて弊社で対応します」という名目で囲い込みが行われ、テキスト1箇所の修正で3,000〜5,000円、画像の差し替えで5,000〜8,000円、新規ページの追加で1万〜2万円といった追加費用が発生します。

士業事務所では、年末年始の営業時間変更、新しい取扱業務の追加、所属弁護士やスタッフの変更、セミナー情報の掲載など、頻繁にサイト更新が必要になります。そのたびに修正依頼と追加費用が発生する状態では、更新が億劫になりサイトが放置されるのが典型的な結末です。更新日が半年以上前のサイトは、見込み客から見ても「この事務所は本当に営業しているのか」と不安を与えます。年間の修正費用を合算すると、管理画面を自分で操作できるサイトを作った方がはるかに安上がりだったと気づくことになります。

SEO対策が一切されておらず検索結果に表示されない

格安制作ではSEO設計が工程に含まれていません。見た目はそれなりでも、検索エンジンからの集客力はゼロに近い状態で納品されます。

タイトルタグ・見出し構造すら最適化されていない

各ページのタイトルタグがすべて「事務所名」だけになっている、見出しタグ(H1〜H3)がデザイン目的で使われていて論理構造になっていない、meta descriptionが空欄のまま、といった状態は格安制作では珍しくありません。これらはSEOの基礎中の基礎ですが、格安制作のワークフローには「検索エンジン対策」という工程自体が存在しないのが実態です。テンプレートを適用した時点で納品完了、という認識で作られています。

SEO対策を後付けするには構造から作り直しが必要

「サイトを作った後からSEO対策だけ追加すればいい」と考える方もいますが、SEO設計はサイトの構造設計そのものです。ページの階層構成、URL設計、内部リンク構造、見出しの論理構造、コンテンツの配置は、後から上塗りできるものではありません。基礎工事をしていない建物に耐震補強を施すようなもので、結局は建て直した方が早いという結論になります。そもそもSEOで成果を出すにはコンテンツの質と外部評価(被リンク・サイテーション)が最も重要であり、サイトの基本構造が破綻している状態では、その土台すら作れません。

士業特有の広告規制に対応できていない

士業のホームページには業法による広告規制が適用されます。たとえば弁護士の場合、日本弁護士連合会が「弁護士等の業務広告に関する規程」を定めており、誇大広告や誤導のおそれのある広告が禁止されています(出典 日本弁護士連合会 弁護士等の業務広告に関する規程)。税理士、司法書士、行政書士、社労士にもそれぞれの会則や倫理規程で広告に関するルールが定められています。

格安制作会社の多くは、飲食店や美容室、整体院など幅広い業種のサイトを量産しており、士業固有の広告規制を理解していないケースがあります。「顧客満足度No.1」「解決実績3,000件」「成功率98%」といった根拠の曖昧な表現がそのまま掲載され、所属する弁護士会や税理士会から指摘を受けるリスクがあります。規制に違反した広告を出している場合、制作会社ではなく先生ご自身の責任が問われる点も忘れてはなりません。「業者に任せていたので知らなかった」は通用しない世界です。

「作り直し」で費用が倍になるのが最も多い失敗パターン

弊社に寄せられる相談で圧倒的に多いのが、「格安で作ったが集客できず、作り直したい」というご相談です。このパターンでは、以下の三重の損失が発生します。

  • 格安制作に支払った費用(5〜15万円、リース型なら数十万円)が無駄になる
  • 新規の制作費用(40〜55万円)が改めて必要になる
  • 格安サイトを運用していた期間(半年〜2年)の機会損失が生じる

仮に格安制作に10万円、作り直しに50万円かかったとすると合計60万円です。最初から適正価格で制作していれば50万円で済んだものが、10万円と1〜2年の時間を余計に失っている計算になります。しかも前述の通り、著作権やドメインの問題で旧サイトの資産を引き継げない場合、文字通りゼロからの再出発です。「安く済ませたい」という判断が、結果的に最も高くつくのが格安制作の最大のデメリットです。

士業のホームページ適正費用

弊社のホームページ制作における費用は、目的によって以下の2段階に分かれます。

目的 適正費用 内容
名刺代わり 40〜45万円 トップ・事務所概要・業務内容・プロフィール・問い合わせの5ページ程度
集客・SEO対策 50〜55万円 名刺代わり+コラム(ブログ)投稿機能。コンテンツ発信による集客基盤を構築

80万円以上は士業には不要

「ページ数を大量に用意したい」「特化型サイトを作りたい」「多言語対応したい」「採用ページを作りこみたい」といった場合であれば80万円以上かかる可能性が高いですが、そうでないのなら高額な印象です。凝ったアニメーションや動画演出、パララックス効果などは、士業サイトの閲覧者が求めているものではありません。見込み客が知りたいのは「この先生は信頼できるか」「どんな業務に対応しているか」「費用はいくらか」の3点です。これらを明確に伝えるシンプルなサイトであれば、過剰なデザインに費用をかける意味はありません。(100万円かけたサイトと50万円のサイトで問い合わせ数に差が出た、という事例は弊社の経験ではほとんどありません)

適正価格に含まれるべき項目

制作費用を比較する際は、金額だけでなく「何が含まれているか」を確認することが重要です。適正価格の制作であれば、以下の項目が標準で含まれます。

  • ドメイン・サーバーの名義が発注者(事務所)であること
  • 制作物(ロゴ・バナー・デザインデータ)の著作権が発注者に譲渡されること
  • CMSの管理者権限が発注者に渡されること
  • SSL化・スマホ対応が標準仕様に含まれること
  • 基本的なSEO設計(タイトルタグ・見出し構造)が含まれること
  • 納品後に他社へ移管する際の制限がないこと

格安制作では、これらの項目が「オプション」扱いになっていたり、そもそも提供されなかったりします。見積書を比較するときは、金額の安さではなく、これらの項目がすべて含まれているかを判断基準にしてください。安い見積書には、必ずどこかに削られた工程や制限された権利があります。

契約前に確認すべきチェックポイント

ホームページ制作を依頼する前に、以下の項目を必ず確認してください。契約後に「知らなかった」では取り返しがつきません。

確認項目 確認すべき内容
契約期間 最低契約期間は何年か。途中解約の条件と違約金の有無
ドメイン名義 ドメインの所有者(Whois登録名義)は発注者か制作会社か。解約時に移管可能か
サーバー管理 サーバーは誰の名義か。管理画面やFTP情報へのアクセス権は発注者にあるか
著作権 制作物(ロゴ・バナー・デザイン)の著作権は発注者に譲渡されるか。契約書に明記されているか
CMS権限 管理画面のログイン情報は渡されるか。自分でテキスト修正やページ追加ができるか
追加費用 テキスト修正・画像差し替え・ページ追加それぞれの費用。月額管理費に含まれる範囲
SEO対策 基本的なSEO設計(タイトルタグ・見出し構造・meta設定)は標準で含まれているか
広告規制 士業の広告規制を理解しているか。過去に士業サイトの制作実績があるか

これらの項目について明確な回答が得られない制作会社、あるいは契約書に記載がない制作会社は、価格に関わらず避けるべきです。安さに惹かれて契約した結果、解約も乗り換えもできない状態に陥るのが最悪のシナリオです。

最後に

格安ホームページのデメリットは、「集客できない」「デザインが安っぽい」だけではありません。2〜3年の契約縛り、著作権の帰属、ドメインやサーバーの所有権、CMS管理権限の囲い込みなど、解約や乗り換えの際に初めて気づくトラブルが数多く潜んでいます。

士業のホームページは、事務所の信頼性を伝え、見込み客からの問い合わせを獲得するための経営投資です。初期費用を数万円節約した結果、作り直しで倍の費用と数年の時間を失うのでは本末転倒です。適正な費用をかけて、ドメイン・著作権・管理権限のすべてが自分のものになる形で制作することを強くおすすめします。

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