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2023.07.27

合同会社のメリット/デメリット

森井 良至
執筆者
合同会社オルトベース 代表 森井 良至

合同会社として設立して5年。実際に事業を運営していくなかで、どのようなメリット、デメリットがあるのか、実例と共に解説していきます。

合同会社とは

「合同会社」とは2006年の会社法改正で新たに生まれた法人格です。

LLCと呼ばれることもあり「Limited Liability Company」の略で、直訳すると有限責任会社となります。「有限会社」という法人格は2006年までありましたが、新しい法人格の「合同会社」が生まれたタイミングで廃止されました。

合同会社は出資者が役員となり(法的には社員)となり、株式会社と違って、お金だけを出して出資ができません。合同会社として出資を受ける場合は、その方が必然的に役員になってしまうため、株式上場(IPO)ができません。

株式会社の社員は毎月給料を支払う社員を指しますが、合同会社の社員は役員(=出資者)となり、報酬は役員報酬となります。

2005年から検索数の推移を見てみると、年々認知度が上がっていることがわかります。

合同会社はスモールビジネスとして事業を行うには最適な法人格です。

  • しばらくの間は社員を雇う予定がない
  • 自宅兼事務所として(SOHOで)事業を開始する予定
  • フリーランス(個人事業主)で年収500万を超えた
  • 法人企業の節税を受けたい
  • 銀行からの融資を受ける予定がない
  • 対外的な見栄を特に気にしない
  • 会社をスケールさせる予定がない
  • 事業がtoC向け(一般消費者向け)

上記のような方は、株式会社ではなく合同会社としての会社設立を検討してみた方が良いかもしれません。

私は2018年5月に合同会社として、会社に勤務しながら会社設立をしました。その経緯を「サラリーマンがfreeeで会社設立してみた」でまとめていますが、約2年経過した今、合同会社のメリットとデメリットを実体験と共に解説していきます。

合同会社のメリット

とにかく安い費用で会社設立できる

費用の種別 株式会社 合同会社
定款認証 5万円 0円
登録免許税 15万円 6万円
合計 20万円 6万円
会社設立にかかる費用に関して

通常は収入印紙代が4万円かかりますが、昨今は電子定款が一般的で、収入印紙代がかかりません。また登録免許税は資本金の額によって変動します。資本金額に0.7%を掛けた金額が、登録免許税となりますが、下限額が記載の金額となります。これらの費用はあくまで実費(法定費用)で専門家に依頼した際の手数料、印鑑証明や登記簿謄本の発行費などがかかりますので、ご注意ください。

株式会社を設立する場合は定款を作成した後に公証人に「認証」を行ってもらう必要がありますが、合同会社の場合は必要がないため、5万円分の費用が節約できます。また登録免許税が株式会社が15万円かかるのに対して、合同会社は6万円と非常に安く、合計14万円の費用が株式会社と比べて安いです。

また必要な書類や決定すべき事項が合同会社は少ないので、株式会社より早く会社設立ができます。

法人企業の節税を享受できる

フリーランス(個人事業主)は所得が増えれば増えるほど、税率が高くなる累進税率が適用されて所得税を納税しますが、法人格は法人税を納税することになります。法人税は利益が増えても、原則一定税率なので、売上が大きい場合は法人成りした方が納税額を節税できます。

個人事業主の所得は、売上-必要経費となりますが、法人企業は自分への給与を役員報酬として支払うことになり、役員報酬は一定の条件で損金算入(必要経費)として扱うことができ、さらにサラリーマンと同様に役員報酬の給与所得控除が適用されます。

また個人事業主よりも経費の範囲が広がります。事業とプライベートで按分計算されている人も多いかと思いますが、法人名義で契約すれば、基本的に全て経費として認められます。(もちろん会社で使うという前提ですが)

個人事業主に比べて法人企業は節税のメリットが非常に大きいですが、この恩恵は株式会社だけでなく、合同会社でも享受できます。

税理士への報酬額が少ない

株式会社と比べて合同会社は決算手続きが簡潔なので、顧問料金・決算費用が安い特徴があります。税理士に聞いたことがあるのですが、個人の青色申告>合同会社の決算>株式会社の決算、の順で手続きが楽とのことです。(年商や仕訳数によって手間は大きく変わりますが)

合同会社で年商1000万以下、社員0人であれば、税理士に顧問を依頼せずに、スポットで決算期のみ決算書類を作成するとランニングコストを抑えることができます。

決算公告の義務がない

合同会社は株式会社と違って決算公告の義務がありません。決算公告は電子公告または官報公告のどちらかで行う必要があり、官報公告の場合は掲載費に6万円がかかりますが、合同会社の場合は掲載の必要がないため、費用がかかりません。

ただ正直な所、株式会社で決算公告の義務があると言っても、罰則がないために掲載していない企業がほとんどなので、そこまで大きなメリットとは言えません。

株式会社への変更が可能

合同会社で会社設立した後、株式会社に法人格を10万円程度の費用で変更することができます。司法書士に依頼した際の費用は5万円程度が相場です。

自由に経営できる

株式会社では取締役会を設置して監査役を配置したり、株主総会を開いたりと、法律上のルールに縛られて経営を行うことになりますが、合同会社は定款に定めたルールに沿って経営を行うので、株式会社に比べて自由に経営を行うことができます。

その他にも、役員任期の更新が不要なので役員改選の費用が削減できる(株式会社は原則2年間)、剰余金分配の制限がない(株式会社は出資比率に応じる必要あり)といったメリットがあります。

合同会社のデメリット

合同会社への誤解や不信感

合同会社は一人でも設立できますが、複数人が集まって作る会社というイメージを持たれがちで「他の出資者は?」「友達とやっているの?」と聞かれたことがあります。

やはり合同会社の知名度はまだまだ浸透していない印象で、不信感を抱く企業も一定数存在するかと思われます。銀行へ融資を受ける際に不利になると聞いたことがありますが、実際に私の会社は融資の相談をしたことがないので、わかりません。

ちなみに私の会社では「合同会社」とホームページや名刺に書くと、ちょっとダサいので、調子に乗って「LLC」と記載していたりします。ただ法人口座の振込名義が「株式会社」だと「カ」ですが、「合同会社」だと「ド」となります。ドって…。2年経っても「ゴ」って書いてしまいそうになります…。(どっちもダサいですが)

代表取締役を名乗れない

合同会社は代表取締役と名乗ることができないため、代表社員と名乗る(名刺に記載する)ことになりますが、合同会社を知らない方だと「何この役職?」ってなったりします。実際にクライアントに打ち合わせの場で聞かれたことが数回あります。

代表社員が「社長」「CEO」と名乗っても良いのか問題は、会社法に「社長」という肩書が存在しないため、名乗っても問題ないらしいですが、トラブル回避のためには定款に「代表社員は社長とする」的な記載をしておくのがベターです。(ちなみに「専務」という役職も会社法上は存在しません)

出資者(社員)と一緒に打ち合わせに行く際、その社員の名刺の肩書が代表社員だと、代表社員二人が存在する、ということになり、クライアントに不信感を与えてしまうかもしれません…笑

上場できない/会社売却(事業譲渡)が難しい

合同会社は株式の売買によって資金を調達できないため、上場(IPO)ができません。また会社を売却する際、持分の譲渡や議決権の問題で基本的に売却や事業譲渡ができません。

ただ、株式会社への変更ができるので、そこまで大きなデメリットではないかと思います。

出資者を増やす際に問題になりがち

株式会社は出資金に応じて利益(配当)を分配しますが、合同会社は比例させる必要はありません。そのため多く出資したのに、役員報酬が少ないといったトラブルが発生するリスクがあります。

合同会社に多い業種

個人事業主より法人の方が経費の範囲が広がるということで、飲食業、IT業、コンサル業の方が合同会社として会社を設立している傾向にあります。私の会社はホームページ制作会社ですが、周りの同業者を見ていても合同会社が多く、最近は動画制作会社も合同会社が多い印象です。

また、許認可が必要な介護業や建設業は法人格が必要になるため、簡単に法人格を持てる合同会社を選ぶ傾向にあります。

全国の新規法人を一覧でまとめたサイトとかを見て頂ければ、合同会社の多さがわかるかと思います。

有名企業の合同会社の例

合同会社は主にスモールビジネスな企業が多いですが、誰もが知る有名企業でも法人格が合同会社の場合があります。

  • アップルジャパン合同会社
  • アマゾンジャパン合同会社
  • ユニバーサルミュージック合同会社
  • P&Gプレステージ合同会社
  • 日本アムウェイ合同会社
  • 合同会社西友
  • 合同会社DMM.com

外資系の会社が合同会社にするケースが多く、理由としては日本法人で株式上場や株主総会を行う必要性がなかったりするためです。

まとめ

合同会社のメリットとデメリットを解説していきましたが、とにかくメリットが大きいので、会社をスケールさせる予定のない方は株式会社より合同会社の方がオススメです。

ただデメリットで紹介しましたが、代表取締役として名乗ることができないのは、2年経過して地味に気になるようになりました。自己顕示欲はほとんどないタイプですが、会社を大きく見せるのは、取引先や採用に関して効果的です。

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